ころまろ☆辛口エンタメ塾

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【水没危機】令和元年に語る平成元年の今頃の話10『事件勃発!新兼荘26時 その1』

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※ここは常に30年前の話をするスレッドです

 

 

 

事件というより自損


時は平成元年。1989年の今頃の話です。

上京した僕は新宿の廃墟のような「新兼荘」というアパート(と呼ぶには若干の抵抗がある)で、初めての独り暮らしを始めました。そしてそこで慣れないうちは色々と事件がありました。


まあ今にして思えばどれもこれも「事件」というより「自損」でありまして、あまり大した話ではないのですが・・・しかしながら当時の自分的には、それぞれの事件が、まさに「死ぬかと思った」ほどの大事件だったのであります。

 

 

グロテクスパンチパーマズ

 

新兼荘には有難いことに水洗トイレがありました。これはもうデザインした人間を褒めたたえてあげたいほどの、『究極の省スペーストイレ』でありまして、僕はいつもいつも感心していたものです。

 

そんな頃、ある日の深夜、当時人気だった深夜番組の「いかすバンド天国」に「現役東京芸大生のバンド」が登場したのです。そう、僕がわざわざ上京し、こんなボロアパートに住んでまで目指していた「憧れの大学」ですよ。その現役の学生たちの登場です

(音大の方だったけど)。

 

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当然ながら過剰に期待をして視たのですが、出てきたのは「グロテスク・パンチパーマズ」という、これがもうかなりカッコ悪いバンドだったのです。

 

当然、ワイプされ予選敗退です。僕はそれを視て、何だか言いようがない怒りがこみ上げてきました。

 

そして僕のその怒りの矛先は、入居以来、ずっと音漏れしていたトイレに向かったのでした(八つ当たり)。

 

音の出るトイレ

トイレは一応水洗だったのですが、その貯水タンクはトイレ内の天井付近にある「木の箱」だったのです。その木の箱から鎖がぶら下がっておりまして、それを引っ張ると水が流れるという実にクラシカルな仕組みですね(たまに金タライが落ちてきそうな雰囲気)。

 

そんでその木箱の中にはプラスチックのウキが浮いていて、それが浮くと注水が止まるというものだったのです。しかしながらどうやらそこがうまくアジャストされていないようで、一定の時間が流れると「シューッ!シューッ!」と音漏れしていたのでありました。

 

まあ普段は別に気にせず暮らしていた僕ですが、件のグロテスクパンチパーマズで怒っていたこともあり、

 

「うっせーな!俺が直してやる!」

 

と、トイレに突入したのでありました。僕は和式トイレのキンカク̪シの上に片足立ちになり、天井の木箱の水の中に手を突っ込みました。そしてウキにつながっている鉄のアームをちゃんとした位置になるようにひねり上げました・・・が、それはあまりにも怒り任せの行動でした。

 

トイレに閉じ込められる

 

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そうなんです。案の定、アームはポッキリと折れて、ウキが取れてしまったのでありました。当然のことながら注水はもう止まりません。すでに満タンのタンクにどんどん水が注がれていきます。

 

僕は「キンカクシに片足立ち」という実にアンバランスな格好で慌ててアームを持ち上げました。水はぴたりと止まってくれました。しかしながらそんな恰好でいつまでもそこにいる訳にはいきません。

 

当然、体力にも限りがあります。じりじりと時間だけが過ぎる抜け出せない密室。まさに死刑台のエレベーター状態です。そして僕は途方に暮れまくりなのです。

 

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「うーん、どうしたらいいのだよぉ・・・」

 

当然のことながら電話はありませんし、そもそも深夜2時です。新入り都市生活者の僕は、こんな時間に大声で周囲に助けを求めるほど精神が図太く出来ておりませんでした。しかしながら体力の限界はあるわけで、もしここで僕が力尽きてしまえば・・・この部屋は二階なのです。新兼荘は水没してしまうことでしょう。それだけは絶対に避けねばなりません。

 

神よ!あと少しだけ

 

その時、追い詰められた僕の目に映ったのは、件のアームにつながって下へと伸びている鎖でした。そう、水を流すときに引っ張るあれであります。

 

僕はそれを慎重に手繰り寄せ、アームを縛ろうとしました。要はその鎖を使ってアームを持ち上げた状態で固定しようとしたわけです。

 

しかしなかなか上手く出来ません。「片手&見えない&水で滑る&鎖が短い&バイタル微量」という負の跳満状態なのです。何度も滑るたびに水が注がれます。僕はもう半べそです。

 

「神よ!あと少しだけ、僕に力を!」

 

僕の心の叫びが通じたのか、鎖がうまくアームのボルトに引っかかってくれました。僕は最後の力を振り絞り給水パイプに鎖を縛り付けました。そして恐る恐る手を離してみると・・・注水は止まっています!僕は遂に勝利したのです!

 

僕が汗だくで密室から脱出すると、テレビの中ではイカ天キングのRABBITが難敵との接戦を制しておりました。

 


Rabbit 「ROCK AND ROLL AVENUE」 イカ天

 

涙にむせぶRABBITの面々。しかし、あの夜の勝者は彼等だけではありませんでした。僕は新兼荘の染みだらけの天井を見上げながら、大の字で達成感というものを味わっていたのでした。

 

実はネジをひねれば止まっていた

 

翌日、大家(山根明似)さんに事情を話すと、その日のうちに直してくれると言ってくれました。

 

「いやあ、かくかくしかじかで、本当に必死でした」

 

と僕が昨夜の激闘を熱く語ると、大家さんは

 

「お前さん、ネジで水が止まることも知らないのかい?」

 

とあきれ顔になりました。そしてそのまま財布から10円玉を取り出すと、水道パイプのネジをそれでひねりました。ピタッ!

 

僕は上京してまたひとつ大人になりました。

 

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