ころまろ☆昭和45年男

毒舌ネットコメンテーターのサブカル話。たまに愛。

【さよならの季節】令和2年に語る平成2年の今頃の話その19

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※ここは常に30年前の話をするスレッドです

30年前の今頃の話ですね。平成元年春に上京した僕は、一年の浪人生活を経て受験期に突入し、そこで色々と思っておりました。

 

さらば新宿KIDS

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ぞくぞくと入試日程が過ぎて行って、永遠に続くかに思えた新宿キッズの仲間たちにも、徐々に別れの気配が漂ってきました。いち早く進路を決めたものは、ちゃちゃっと少ない荷物をまとめて、実にあっけなく予備校を出て行ったのです。

 

そしてこの頃「美大の合格発表を待たず帰郷する」人がかなりいた事に僕は驚きました。まあ「当時の美大受験とは殆どの人間が落ちる試験なのだ」という事を差し引いても、それは予想以上の事でした。

 

おそらく合格通知の輸送先を実家にしていたのでしょうけど・・・これって3月分の家賃を払いたくなかったのかなと思ったり・・・まあその事は今でも謎だったりしています。

 

そんなわけでいよいよその日が来ると、居残り組は帰郷組の背中に、冷やかし半分の別れの言葉を投げかけました。

 

「最後に言うけど、二度と馬鹿面を見せるなよ」

 

おそらく多くのキッズとは、もう二度と会うことは無いのでしょう。僕らはそれを知っているからこそ、必要以上にはしゃいでいたのだろうと思います。

そして言われる方もそれが解っているからこそ、決してマジにはならないのでした。ただ親指を突き上げて去っていきました。

 

『悔しいけど、お前・・・なんかカッコいいぜ』

 

つれないルイ

その年は日大芸術学部の受験が早めの年でした。

そしてそこが本命だった写真家志望のルイ(僕等の写真を撮ってくれていた京都男)は、望み通り見事に合格を果たし、いち早く予備校を去ることになったのです。

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「ツノダ(僕)さん、ジムモリソン男さん」

ルイがやってきました。

「受かりましたんで、ほなさいならですわ」
「おめでとう!腕を磨いてまた写真撮ってくれよ!」

「撮りません(キリッ!)」
「へっ?」
「今日限りで赤の他人とさせて頂きますわ」

「おいおいおい!そりゃないよ」

「もう二度とお会いすることはないでしょう」

「ちぇ!わかったよ!しっしっ!」

「どうかお元気で過ごさりはってください」

「ルイも元気でな」 
「はい、ほんならさいなら」

 

そんな冗談めかしたやり取りが本当に最後になってしまい、その後、ルイと連絡を取れたのは40過ぎてから・・・それもSNSにおいてなのでした。

 

不在の別れ

サトーと歌舞伎町で遊んでいると、何だかコマ劇場前が盛り上がっています。何の騒ぎだと見に行っていますと、そこでは大学ラグビーの勝利を祝う学生連中が、校歌やら応援歌やら大勢で歌っているわけです。

 

「なんだあいつら」

 

サトーは歌舞伎町に似使わぬ『さわやか、まじめ、いいとこのおぼっちゃん』的な学生達に、あからさまに敵意を持ったようでした。そして例の代々木駅前の時同様に、空き缶を拾ってその大勢の集団に投げつけたのです。

 

カラーン!

 

学生の頭にものの見事に命中するも、その学生は気が付かないふりをしています。その腰の引けた様子が面白くなかった僕も、サトー同様に、空き缶を集団に投げつけました。それでも相手は気が付かないふりです。

 

「あいつら全然酔ってないじゃないか!」

 

サトーは全く理不尽な理由で、学生に対してキレまくっています。そしてそんな僕らの様子を笑いながらみていたアンパン娘たちを誘って、僕らは飲みに行きました

 

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サトーとの別行動を終え、白白と空が明るくなってきた頃に新兼荘に戻ると、部屋の中が綺麗に整理整頓されておりました。

コタツの上には当時僕が好きだった「インスタント熱燗」と新品のビデオテープが置いてあり、そこには手紙が添えられておりました。

 

『今までお世話になりました。ジモトの学校に通う事が決まったので九州に帰ります。ビデオテープはプレゼント。ではまたアイマショウ! ジュンタ』

 

新宿駅南口 2:00pm

僕は南口を出て甲州街道を渡ったところの欄干にもたれています。

当時の南口の向かいには(要はルミネの反対側の新南口とか高島屋とかがあるあたり)には何もなく、都心にしては珍しくそれなりの空が広がっておりました。

 

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僕は欄干に小さく刻まれた【またされんぼう】たちの告白を読みながら、足元に吸いこまれていく電車を、ただぼんやりと見つめています。

 

『ぐるぐる回ってどこに行くんだよ』

 

曖昧な僕をあざ笑うかのように、しっかりした人間をギュウギュウ詰めにした電車が、僕の足元へと、ただただ、そしてどんどん吸いこまれていきました。

 

『参ったね。勘弁してくれよ』
『俺もどこかに連れて行ってくれよ』

 

「遅くなってごめんなさい」

 

やわらかなNONの声に振り返ります。軽く息を弾ませている彼女の胸には、あの銀色の薔薇がきらめいていました。

「全然待ってないよ。じゃあ行こうか?」

僕等はいつもの様に歩き出します。いつもの様に、新宿NSビルに向かって。

 

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NONを見送った帰りに、僕はそのまま予備校に向かいました。そしてさりげなくロビーの掲示板を見つめます。そこには、その日に発表があったムサビの合格者の番号が速報で出ておりました。

 

「冴えないな・・・」

 

僕は補欠合格者欄にある自分の受験番号を、ただ人事の様に眺めていました。

 

ーーーーー

 

僕は新兼荘に帰るべく甲州街道を歩いています。気が付けば騒がしかった日々は既に過ぎつつあり、いつのまにか僕自身も、独りぼっちで、独りぼっちの家に帰る事が多くなってきたのです。

 

「まあこれなら完璧だったタマビの方は、俺もジムモリソン男も受かっているだろうな。まさにホップステップジャンプで本番の芸大だ!」

 

僕は宵闇に込み上げる寂しさに対して強がりを言います。

芸大の試験が迫っていました。

 

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