ころまろ☆昭和45年男

毒舌ネットコメンテーターのサブカル話。たまに愛。

【板前さんを怒らす方法】令和2年に語る平成2年の今頃の話その21

スポンサーリンク

※ここは常に30年前の話をするスレッドです

 

30年前の僕の芸大受験期を振り返るお話です。

東京芸大入学を目指して平成元年春に上京した僕は、新宿での1年の浪人生活を経て、いよいよ本格的な受験期に突入しておりました。 そして3月の声を聴く頃には、私大の受験&合格発表もあらかた終わっており、残す試験も芸大の二次試験のみとなりました。そんなわけでにぎやかだった予備校の人口密度も本当に下がってきたのです。

 

f:id:koromaro:20200308153848j:plain

 

 

サトー、ウェイターになる

 

私大系のサトーは進学先を専門学校に決めました。もうこれからは受験勉強をすることはありませんので、サトーは新生活に向けて、渋谷の喫茶店でウェイターのアルバイトを始めたのです。

 

f:id:koromaro:20200308153952j:plain

 

野田秀樹と内田裕也の若い頃を足して二で割ったような危険なルックス・・・今まで語ってきたように、サトーはこれまで僕が人生で出会ってきた人間の中で、間違いなく一番滅茶苦茶な男でした。いつ何時も、まさに「破天荒極まれり」という感じの人間でしたので、僕はそんなサトーが大人しくウェイターをやっている姿がどうにも想像できませんでした。

 

「実は僕チンは結構真面目なんだよ。わかるかねチミも?」

 

マークパンサー

 

サトーがバイト先の喫茶店の雑居ビルには『モデル事務所』も入居しておりました。

 

「あのカッコ悪い外人のモデルも良く来るぞ」
「ひょっとしてマークパンサー?」
「ああ、たぶんそうだ」

 

マークパンサーと言えば『globeの何をやっているかわからない人』として有名ですが、当時はメンズノンノのモデルとして一世を風靡していたのです。

 

f:id:koromaro:20161223114336j:plain

 

「あいつら個別会計で領収書もよこせっていうから、本当に面倒臭ーんだよ」

とサトーは毒づいておりましたが、しかしながら


「でもまあなんか気持ちよく挨拶してくるんだよね。だからこっちもついつい愛想よくしちゃうんだけどさ」

 

とも言っていたのです。

 僕はそれを聞いて

『モデル集団なんてサトーが一番嫌いそうな輩なのに、コーヒーぶちまけないなんて、サトーもだいぶ丸くなったな』

と思ったものでした。

 

チーマーの喧嘩

ある日、サトーがバイト帰りに渋谷駅に向かっていると、センター街で渋カジファッションの若者たちが何やら取り囲んでいたそうです。『何だろう?』と思ってサトーが見に行くと、その輪の中では若者同士がタイマンをしていたのでした。

 

f:id:koromaro:20200308154319j:plain

 

しかしその喧嘩は明らかに優劣が付いており、完全にイってしまった表情の男が、無抵抗の血だらけの男を殴り続けていたそうです。それに対して周りの大勢の仲間たちは、どうしていいかわからず、お互いにきょろきょろしているだけなのでした。

『こいつら喧嘩慣れして無いな・・・このままだとヤバいな』

と思ったサトーは、その喧嘩の仲裁をして、血まみれの男を救い出したそうです。今にして思えばこいつらは『チーマー』の走りだったんでしょうね。加減というものが理解できないその経験不足な姿勢に、その後の凶悪化の理由が何となく分かるような気がします。

そんなわけで僕はその話を聞いて、

 

『しかしサトーが喧嘩を止めるとは…世も末だな』

 

と思ったものでした。

 

高そうな寿司屋

ハードなバイトをしていたため(この時期だけ)サトーは羽振りが良かったのです。

 

「ツノダ!寿司を食いに行こうぜ!」
「こっちにきて寿司屋になんて入ったことないよ」
「心配するな!俺がおごってやるから」
「回転ずし?」
「そんな訳ねーだろ!高い店だよ」
「そういう店は苦手なんだよ。マナーとか知らないし」
「だらしねーなあ!俺がマナーを教えてやるよ」

 

そんなわけでサトーとともに歌舞伎町の高そうな寿司屋に入りました。

 

カウンターの中には板前さんが2人いて『サンドウィッチマンの眼鏡の方』みたいな凄みのある中年男が、僕らの目の前に立ちました。そして明らかに場違いな僕らを、威嚇するかの如くじっと睨んでいます。

 

「大将!お任せで二人前頼むわ!」

 

サトーはいかにも慣れた風情で注文しました。黙々と握り始めるサンドウィッチマン。僕はサトーの堂々とした態度に少し安心しました。

 

f:id:koromaro:20200308154428j:plain

 

場が凍る

しばらくすると白身の握りが僕らの前に出されました。マナーを知らない僕はサトーの様子を横目で伺いました。するとサトーは迷いなく刺身部分を箸でペロリとはがし、それを醤油皿でじゃぶじゃぶし、シャリの上に戻しました

 

僕はその瞬間、何だかその場全体の空気が凍ったような気がしました。

恐る恐るサンドウィッチマンの方を見ると、強面の彼の目が点になっておりました。僕はそれを見て『これは絶対に違う!』と確信しました。

 

「サトー、寿司ってそうやって食べるのか?」
「そう、これがマナーってやつ」

 

サトーがあまりにも迷いなく言い切るので、僕もそれに従おうとしました。すると

 

「お兄さん方、その食べ方は違うよ…」

 

目の前のサンドウィッチマンが怒りを隠しきれない表情でそう僕らに言いました。

「へ?」と答えるサトーと、固まる僕に対し、サンドウィッチマンはさらに

 

「それは失礼な食べ方ってやつだよ」

 

と続けたのです。

 

意外な反応

『ああ、やっぱり違うじゃないか!サトーのばかやろうめー!この状況をどうやってのりきりゃいいんだよ。サトーVSサンドウィッチマンなんて悪夢じゃないか!しかもまだ一貫も食べてないんだぞ!何がおごりだよ。お前なんかと知り合うんじゃなかったよ』

 

と、僕は土砂降りのような文句を0.1秒くらいで思いました。

 

すると当のサトーが

 

「てへ!バレたか!実は俺もこういう寿司屋は初めてなんだよ」

 

と笑顔で白状したのです。

 

そうなってしまうと、お次は合点承知で僕の出番です。僕はサトーにテキトーに文句を言いつつ、サンドウィッチマンに『寿司屋のマナー』について享受してもらうように頼みました。するとサンドウィッチマンは一気に機嫌がよくなり、寿司の所作やうんちくを教えてくれつつ、

 

「お兄さんたち素直だからこれもサービスだ」

 

と、観たこともない寿司を2回もふるまってくれました。そして会計も『学割』にしてくれたのです。

 

f:id:koromaro:20200308155506j:plain

 

 

店を出た僕は『学割と言っても予備校生なんだよな』と思いつつ、サトーに礼を言いました。

「いいってことよ!それよりショットバーに行こうぜ!」

 

僕はそんなサトーのチンピラチックな後ろ姿を見つつ、

 

『サトーもちょっとだけ大人になったなあ』
『こいつが若干まともになったのは俺のおかげだな』

 

なんて事も思っていました。
芸大受験の真っただ中ではありましたが、この頃のサトーとのわずかながらの「平和な夜遊び」の時期は、今でもたまに僕の心を温めたり、ふいに寂しくさせたりしています。

 

www.koromaro.com

www.koromaro.com



TOP