コロマリズム 売れない彫刻家のサブカル自慢話

売れない彫刻家のコロマロです。この雑記系ブログで、芸能ネタやダイエットやバブル期の自慢話を語りながら、彫刻しつつ、皆さんのお越しをお待ちしております。ちなみにアルバルク東京のファンであったりします。

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【合格発表と貼り紙】令和2年に語る平成2年の今頃の話その23

※ここは常に30年前の話をするスレッドです

30年前の僕の芸大受験を語るお話です。
いよいよ合格発表の日が来ました。


 

 

代々木ゼミナール造形学校 1:00PM

芸大の実技試験の第一合格発表の日になりました。

とはいえ、最終発表でもないのに、わざわざ上野に行くのが面倒だった僕は、いつの如く、予備校の掲示板で結果を見ることにしました。

 

恐ろしく人のいない予備校です。まあ当たり前ですね。最終発表じゃないとはいえ、現在予備校に残る生徒全員が受験している大学の、その大事な合格発表の日なわけですから。

 

しばらくすると事務の人が掲示板の前に来て、薄っぺらなA4の紙を2枚掲示板に張りました。するとそれを待っていたかのように、どこからともなく生徒が掲示板の前に集まってきたのです。僕も何気無い素振りでそれに続きました。

 

「さてと70……何番だったっけ?」

 

彫刻科の発表番号を覗いて見ます。 

 

 

「あれ?」

 

 

有るべきはずの番号が無いのです……それも70何番どころか、70番台そのものがありません。僕の頭の中は疑問符で一杯になりました。そしてもう一度じっくりと表を見てみてみましたが、やはり無い物は無いのです。どうやらそれは、この場においては、間違いの無い事実の様でした。

 

僕はその場をすぐ立ち去りました。 それは別に事実から逃げたかったわけではなく、 それどころか逆にしっかり確認したかったからなのです。 僕は受験票を手に電車に乗り上野へと向かいました。

 

 

西新宿 6:00PM

 

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約束の時間に、僕は公衆電話に向かいました。コール音が止まればこの受話器からNONの声が流れてくるはずです。

 

「はい」

「あっ、ええとですね・・・」

「私です」
 

「発表見てきたけど、残念ながら俺は落ちてしまった模様」

 

 

僕は勤めて冷静に言葉を続けようとしましたが、どうにもこうにも、それに続く言葉が見当たりませんでした。

 

「あの薔薇を見ながら、一緒に芸大に行けますようにって、毎日祈ってました」

 

しばらくした後にNONが静かに言いました。

それを聞いて僕は今落ちこんではいけないと思いました。そう、僕の試験は終わってしまっても、それと同様に大切なNONの試験はまだ続いているのです。

 

 

「じゃあ今度は純金の薔薇を贈るからさ、芸大で待ってて」

「えっ?」

「あと一年浪人するよ。新宿もやっと好きになってきたし」
 

電話を切った僕は夜のビル街を見上げていました。
閑散とした肌寒い月の夜。果てしなく高い暗闇の空。

 

「負けないぜ……どんなに迫ったって、今の俺はな」

 

この街であと一年。共に時を刻んできたキッズ達は、ほとんど居なくなってしまいました。でも僕にはNONがいるのです。

 

 

「決して独りじゃない」

 

「独りじゃないさ」

 

代々木ゼミナール造形学校 3:00PM

翌日

予備校に顔を出した僕は、またしても芸大試験の恐ろしさを思い知らされました。それは昨年同様、この代ゼミの彫刻科から受験した人間が、物の見事に全員落ちたという衝撃の事実でした。

そして彫刻科だけではなく、デザイン系のイケメンミズキもシゲもナカタニも・・・さらにはあのキマちゃんも含めて、僕が知り得るすべての人間が、今回の芸大の第一実技を突破できなかったのでした。いくら何でもそんなという・・・

 

「やっぱり甘くないな」

 

ジムモリソン男は言いました。

 

「今日はみんなで飲もうぜ」

 

 

代々木駅前雑居ビル2F 7:00PM~

 

飲み会は高校生から講師まで、大盛り上がり大会になりました。僕も酔っぱらった高校生の汚れた服(彼女のプレゼント)をはぎ取って、居酒屋のごみ箱に捨ててしまうという暴挙を働いたりして、実に楽しく過ごしました。そういやあいつどうやって帰ったのでしょう?

 

そんなわけで僕らは『1年後の芸大へのリベンジ』を熱く、互いに誓い合ったのです。

 

飲み会は酷い泥酔者が出たことから、いつもより早めのお開きとなりました。すると一番付き合いの古いヌマザキが「久々にツノダの家に泊まりたい」と言ってきました。当然OKです。僕らは2人でふらふらになりながら新兼荘に向かいました。

 

新兼荘 11:00PM

 

新兼荘につくとドアにデカデカと張り紙がしてありました。

 

『至急実家に電話せよ』

 

あまりに激しい書きなぐりに、僕とヌマザキは固まりました。それに当時、僕の両親は大病を抱えていて、特に父親は、いつ何があってもおかしくない時期だったのです。当然、新兼荘には電話などありません。僕は急に弱気になりました。

 

「荷物おいたら電話につき合ってくれないか」

 

ヌマザキは無言で頷き、公衆電話まで一緒にダッシュしてくれました。

 

電話に出たのは姉でした。姉は

 

「あなた、ムサビを繰上げで受かったってさ」

 

と言いました。両親への心配がマックスだった僕は、それを聞いて腰が抜けるほど安堵しました。そして振り向き

 

「俺ムサビ受かったってさ」とオウム返しでヌマザキに言いました。

 

姉はそんな僕の反応に、僕がかなり喜んでいると感じたようで「俺受かったって喜んでいるよ」と家族に言っているようでした。電話の向こうの笑い声が聞こえます。でも・・・

僕は父親にとりあえず礼を言って電話を切りました。
「色々相談したいことがあるのでそのうち帰省する」と告げて。

 

 

 

「良かったなツノダ」

「うん無事で本当に良かった」

「そっちじゃないよ!合格おめでとう」

「うん・・・でも行かないかな・・・」

 

新兼荘まで歩いたところでヌマザキは言いました。

 

「ツノダはそういうと思ったよ」

「まあね・・・そりゃそうでしょ」

 

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